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   筑前名所図会

 著者奥村玉蘭の「筑前名所図会」は、筑前の名所旧跡やそれにまつわる神話、伝説、歴史祭礼行事などを紹介したものである。筑前街道筋の家並み、社寺を写生した詳細な俯瞰図、神話、伝説の想像画など併せて246点の挿し絵入りで、江戸時代の筑前国をリアルに知ることができる。玉蘭氏は伊勢参宮の折に、諸国の名所図会を見て名所旧跡の多い筑前国については案内本がないことから、執筆を思いたったという。本文は貝原益軒編の『筑前国続風土記』に拠るところが多く、その構成は全10巻で郡別となっている。尚、奥村玉蘭氏は博多中島町の醤油醸造元(中島醤油)。屋号を「煙草屋(たばこや)」に生れた。幼い頃より儒学者亀井南冥・昭陽に師事し、絵を佐伯岸駒(さえきがんく)に学んだ。亀井学派追放の折、その門人たちと親しく交流し廃嫡された。その後太宰府に居を構え、太宰府天満宮に絵馬堂を建設寄進し、太宰府史跡の保存に尽力した。