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   箱崎の蔬菜(そさい)

  九州大学は明治44年に糟屋郡箱崎町に設立された。それ以前の箱崎は「地蔵松原」が白砂青松の海岸に沿って帯状に広がり、その南側に大畑作地帯が展開する豊かな農村であった。これらの畑からは、「博多ネギ」、「博多キュウリ」、「博多ナス」など、“博多ブランド”の野菜が生産され各地に送られていた。加えて、重要な蔬菜(そさい)の供給地と紹介されており、明治後期には、大阪府堺市、山口県安岡村(現・下関市)とともに「日本三大蔬菜地」として有名であった。なかでも「箱崎ぼうぶら」の名で知られたカボチャは、箱崎の特産であった。箱崎は砂地で、耕作に適した土地ではなかったため、潅漑用の地下水の揚水方法「ハネツルベ」が五百余りも林立して一大景観を呈していた。大変苦労して開拓した農作地は九州帝国大学工科大学の設立という国家的大事業のために土地収用法で取り上げられ、農民達は鹿児島本線の南側に新たに畑地を開墾しました。